クロ * Full picture of the plan * Ⅳ




その日から、全てが一変した。



親は毎日のように帰って来るようになり、学校ではいじめの標的から外れた。



その理由なんざすぐに分かった。



自分の子でもない奴を育児放棄し、警察にでも駆け込まれたらどうしようもないから。



ただそれだけのために毎日親が帰ってくる。



本当の親がいない子供、そんな奴が学校へ来たから。



反応なしの俺なんかよりいじめがいがあると思い、俺から神楽に標的を変えただけ。



今まで見て見ぬふりをしてきた奴らも、俺をいじめてた奴らも。



神楽に標的を変えた途端に話しかけてくるようになった。



…だから、正直言ってあの言葉は嘘だったと思う。



「伊織さぁー、神楽といて疲れねぇか?」



いつものように聞き流そうとしていたその言葉に、俺はピクリと反応した。



「は??」



「血は繋がってねぇし、赤の他人だろ?」



クラスメイトにそう言われた時、俺は思わず即答した。



「あぁ。
確かにあいつは赤の他人で弟じゃない。」



そこまで言って、ハッとした。



俺は何を言おうとしてる?



当時の俺にとって、赤の他人なのは神楽だけじゃない。



ここにいるクラスメイトも、親も俺にとっては赤の他人だ。