家に誰もいなくたって、親と話さないのだって、別にどうでもよかった。
俺はただ寝泊まり出来る家があるだけでよかった。
どうせ俺には、学校にさえ居場所なんてなかったんだから。
……簡単に言えば、俺はいじめられてた。
毎日毎日学校に行ったら、殴られ、蹴られ、私物は取られ、捨てられ、ボロボロにされる。
勿論学校側は全部黙認してた。
…それでも、俺はどうでもよかったんだ。
誰が俺を蹴ろうが、ボロボロにしようが、正直興味なかった。
今思えば冷めた子供だったと思う。
何事にもやる気は起きず、ただただ毎日時間を潰すために学校へ行っていた。
本当にそれだけだったのに。
…なのに、突然神楽が家にやってきた。
俺と同い年くらいの女の子が、服もボロボロなのに必死でこの子を助けてくれと。
「おねがいっ!神楽を助けてっ!!
必ずむかえに来るから!おねがいします!!」
涙の跡があるから散々泣いた後なんだろうな…とか、不思議と頭は冷静だった。
「なんで?俺なんかにたのまない方がいいと思うけど??…それにあんた、ほんとにむかえに来る気あんの?」
本当に冷めた奴だと自分でも思う。
自分と同い年くらいの女の子が必死で助けを求めてるのに、それを拒否るなんて。
「…僕は来ない。来るのは僕じゃない
神楽の、本当の兄貴だ。
絶対っ絶対5年以内に兄貴に会うから
それまで、藤井伊織。あなたが彼の兄になってあげて。」
半ば無理矢理気絶している神楽を渡され、宣言した彼女はさようならと一言いって去っていった。



