向日葵「…おかえり」



ふわりと優しく、向日葵が微笑んで俺を迎える。



見たことのない向日葵の表情に、俺は目を疑った



一瞬、ほんとに一瞬だけ、満開に咲き誇る向日葵(ヒマワリ)の花に見えた。



琥珀「…ぁ、あぁ。
遅くなって悪いんだけど、先にシャワー浴びてきてもいいか、、?」



向日葵「(コクッ)」



戸惑いで声が震えるが、向日葵は気にする様子なく、1つ小さく頷いた。



ベッドに座っている向日葵の反対側にあるクローゼットから、黒のスウェットを取り出し、鞄を適当に放り出して、向日葵の方をなるべく見ないように部屋を出た。



バタンッ



2人しかいない静かなこの家に響くほどの大きな音で、洗面所の扉を閉めた。



閉めたばかりの扉にもたれかかりながら、ズルズルとしゃがみこむ。



柄にもなく、心臓が飛び出しそうなほどバクバクと鳴り、ギュッと心臓を服の上から握った。



琥珀「なんだよ…ッ……あれっ、……!」



異様に耳の良い向日葵に聞こえないよう、声を押し殺しながら呟いた。



…まるで、これが最後だと。そう言われているような微笑みだった。



これから、向日葵が遠くに行くような。



二度と会えない、会うつもりはない。



そんなことを言われている様にさえ思えた。