狂ったように言葉にならないことをぶつぶつと綴り、ハッとした時には俯いたままゆらりと立ち上がっていた。
都兎「ああああああああああああああころせばいいこいつをおれをあいつをももをこうはももをころせばしなないしねしねしねころすころすころすころすころすころしてやるころさなきゃころせばいいそうだろねえおれがころせばだれもきずつかないもうだれもうしなわないいなくならないひとりはいやだひとりはいやだひとりはいやだこわいこわいこわいころせばいいしねばいいしにたくないころしたくないこわいぜんぶこうはももがわるいこうはもものせいそうだそうだぜんぶわるいのはももだおれはわるくないおれはなにもしてないおれはころせばいいころせば、いいんだ」
ゆっくりと顔を上げたお兄ちゃんを見て、私は漸く走り出した。
虚ろな目で「ころさなきゃ」と百桃に近づくお兄ちゃん。
泣きそうな顔で、苦しそうな顔で、ただお兄ちゃんを見つめる百桃。
このままでは本当にお兄ちゃんが百桃を殺す。
頭の中で酷くうるさく警鐘が鳴る。
都兎「ぜんぶぜんぶおまえのせいだおまえがとうさんたちをころしたそうだろなあだからおれがころしてやるころしてやるころしてやる」
ナイフを向けられているのに百桃は一歩も動かずただただお兄ちゃんを見ていた。
希輝「おにいちゃんっ!おにいちゃんっっっ!!」
今までに無いくらいの大声で叫んだ。
ただただお兄ちゃんが正気に戻ってくれるのを願って、お兄ちゃんを呼び続けた。
百桃「……そうだよ。全部"虹羽百桃"が悪いんだ。"虹羽都兎"は間違っていない。
ただ"殺せばいい"。"親の敵"を。」
もうナイフの先端が百桃の体に当たりそうになった時、百桃はお兄ちゃんの頬に手を伸ばして囁いた。
都兎「ぜんぶこうはももがわるい。そうだ。おれはわるくない。ころしたのはこうはももだ。」
希輝「ちがうっ!!」
2人の間に立ってお兄ちゃんの腕を力いっぱい掴んだ。
お兄ちゃんも百桃も私に視線を向けなかったけど、私は叫んだ。
お兄ちゃんに届くことを願って。
希輝「ちがうよ!おにいちゃん!
あれはじこだったんだよ!!だれもわるくない!ももだってわるくない!!おにいちゃんもわるくない!!!!」
都兎「……ぁぁぁあぁああぁッッッあああぁっ!!」
私の声が届いているのかは分からなかったけれど、お兄ちゃんはまた苦しみ出した。
希輝「わるくないんだよ!だれもっ!!
おにいちゃんはひとりじゃない!ききがいる!
ずっといっしょにいる!!いっしょにいるからっ
だからっ!おにいちゃんっっ!!!!
もどってきてよ!」



