都兎「…ーーなんかッいなければよかったのに!!」
怒鳴り声だったはずのお兄ちゃんの声は今にも泣きそうで、思わず息が詰まった。
その言葉が、まるで自分に言われているようで。
お兄ちゃんの苦しみの全ての様に錯覚した。
百桃「っふざけるな、!!!」
ずっとただ怒鳴り声を受けているだけだった百桃が、ピリピリと肌で感じるくらい殺気立ってお兄ちゃんを突き飛ばした。
希輝「おにいちゃんっっ!!」
今まで地面に張り付いて動かなかった足が唐突に軽くなってお兄ちゃんに駆け寄ろうとした。
希輝「ひゅっ……ぁ………ぁあっ、」
…が、たった一歩踏み出しただけで私の足は動かなくなった。
それは、お兄ちゃんの手に握られるキラリと反射したナイフが視界に入ったからだ。
希輝「…ゃ………いやっ…!やめ、…」
訳が分からないままただただ首を横に振って震える声を出す。
止めなきゃ、とは分かっていても足は金縛りにあったみたいに動かない。
いやだ、やめて、おにいちゃん、もも、しんじゃう、やだ、とめなきゃ、たすけなきゃ、やめて
視界がぼやけていながら、私の目はその光景を逸らすことが出来ない。
都兎「……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねシネシネシネシネシネシネシネシネシネしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね!!!!」
ナイフを百桃に向けたまま、お兄ちゃんは笑っていた。
狂気じみた笑顔で。
笑って、笑って、笑って、笑って、笑って、笑って、笑って、笑って、笑って。
…そして、泣いていた。
不思議と、"怖い"とは思わなかった。
狂気じみた声で、狂気じみた笑顔で、狂気じみた目で、百桃一人を見つめるお兄ちゃん。
見たことがないのに、あんなお兄ちゃん知らないのに。
何故かお兄ちゃんが誰よりも苦しんでいる気がした。
都兎「…しねおまえがいるからおまえをころせばおまえがももがこうはももがとうさんとかあさんとららをころしたころしたころしたころさなきゃころさなきゃころされるしになくないしにたくないしにたくないいやだいやだいやだやだやだやだやだしにたくないころしたくないころされたくないたすけていやだこわいころさなきゃころされるももがこうはももがいなければおれがいなければあれあれあれだれがわるいのおれがわるいのおれのせいなのやだやだやだころさなきゃしにたくない」



