都兎「っ答えろ!!まただんまりかよ!なあ!?」
私を抱えたまま、お兄ちゃんは百桃を蹴飛ばした。
軽い百桃はそれだけで数メートル後ろへ下がった。
蹴ったお兄ちゃんの顔が今までに見たことがないくらい怖くて、何か取り返しのつかないことをしそうで、腕の中から必死で声を上げた。
希輝「おにいちゃんっ!なにもされてないよっっ!!ねえおにいちゃん!!!!きいてっ!!」
手足をばたつかせて暴れ、大声で叫んだ。
都兎「…っ…」
すると、お兄ちゃんから嫌な気配が消えた。
それと同時にお兄ちゃんの体が震えだした。
希輝「おに、ちゃ?」
都兎「ぁ……ぁあっ………」
私から手を離して、頭を抱えて座り込んだ。
言葉にならない声を上げ、震えている。
なんでこうなったのか、なんて当時の私も今の私もわからない。
それでも、落ち着かせなきゃ、という気持ちだけはあった。
希輝「おにいちゃん!おにいちゃんっ!!
ききだよ、きき!わかるよね!?おにいちゃん!」
都兎「あ"あ"あ"ぁぁっ……ぁ…っ…………」
けど、私が話しかければかけるほどお兄ちゃんは苦しんでいた。
なんでかはわからなかったけど、黙ってることなんか出来なくて、ひたすら声を掛け続けた。
希輝「おにいちゃん!ねえっおにいちゃん!!おに」
百桃「僕が、やる」
お兄ちゃんの体を揺さぶる私の手を掴んで百桃がそう言った。
普段なら何か反抗していたのだろうけど、この時は必死で、無言で退いた。
百桃は頭を抱えていたお兄ちゃんの手を無理矢理剥がし、無表情で語りかけた。
百桃「…虹羽都兎。お前は、何もしてない。何も知らない。全ては、虹羽百桃のせい。」
都兎「ぅあっ……こ、うは、もも…の、せい」
百桃「そう。虹羽百桃のせい。虹羽都兎は、何もしてない。悪くない。」
都兎「…な、にも、し、てない、……」
百桃の言葉を虚ろな目をして復唱するお兄ちゃんはまるで何かに"操られている"みたいだった。
百桃「(パチンッ)」
バタッ
希輝「っおにいちゃん!!」
2人が会話とも言えない会話を数回した後、百桃は小さな手を鳴らした。
その音を聞くとほぼ同時にお兄ちゃんは倒れた。
慌てて駆け寄ったけど、お兄ちゃんは寝ているだけだった。



