そうして再び意識を失ったが、数時間後すぐに目を覚ました。



あれだけ泣き叫んだためかもう絞り出してもでないほど涙は枯れてしまった。



数時間前、一日前とは違って、凄く落ち着いた状態でおじいちゃんに連れられ、事故後初めてお兄ちゃんと対面した。



希輝「……おにいちゃん…」



たった一日会っていないだけなのに、酷くやつれ、衰弱していた。



おじいちゃんの手を離し、ゆっくりお兄ちゃんに近づいた。



病院のホールの長椅子に座って項垂れるお兄ちゃんに手を伸ばした。



何をしようとしていたのかは自分でもわからない。



けど、何かしないと、と心のどこかで感じた。



私の手がお兄ちゃんに触れる直前で、逆にお兄ちゃんに腕を掴まれ、引き寄せられた。



抱き上げられるように持ち上げられ、お兄ちゃんの膝に跨るようにして抱きしめられた。



希輝「おに、」



都兎「……おまえが、」



訳が分からず再び呼ぼうとした声を遮って、お兄ちゃんは掠れて震える声を絞り出した。



都兎「…いきてて、、よかった……っ…」



肩の辺が濡れていくのがわかった。



今までお兄ちゃんが泣いたところを一度も見たことがなかったのに。



…お兄ちゃん。どうしてあの時私にそんなこと言ったの?



……今になっても、私にはわからないよ。



都兎「…っ……おまえだけは、…おれが……まもる、っから……。」



だから、死なないで。



そう小さく呟いた言葉はきっと私に聞かせるつもりはなかったのだろう。



震える体で、声で、お兄ちゃんは必死に願っていた。



…そして、お兄ちゃんはこの日から変わってしまった。



とても悪い方向に。



歯止めの利かない、取り返しがつかなくなるところまで。



お兄ちゃんは壊れてしまった。