…それを見た時、私の中には黒い感情が吹き上がってきた。



自分と遊んでいた来蘭が百桃に取られた気がした。



怖かった。必要とされなくなるんじゃないか、って



だって、この家で浮いていたのは百桃だったけど、嫌われていたのは私だと自覚があったから。



希輝「ら、ら‥‥」



来蘭までもが私を必要としてくれなくなるんじゃないか。



ここに居られなくなるんじゃないか。



頭にはそれしかなかった。



……殆ど無意識だった。



--ドンッ



百桃「っ、」



来蘭「!ももっ!!」



気がついたら、百桃を思い切り突き飛ばしていた。



当然のように2人とも驚いていたけど、一番驚いたのは自分の方だった。



百桃「きき、」



希輝「ッッ…、」ダッ



手を伸ばした来蘭の手を取り、立ち上がった百桃が、感じ取れない瞳で私を見つめる。



何を言われるかわからない恐怖で私は思わず逃げ出した。



……その後、誰かが追いかけてくることも、何かを言われることもなかった。



けど、私の中には初めて抱いた小さな黒い感情、嫉妬だけが残った。



-それから約半年が経ったある日。



その日、私は百桃の秘密を知った。



夜中、寝れなくてベッドから抜け出した私は廊下を出歩いていた。



ママやパパが起きてるかと思い、階段をゆっくり下りてリビングへと向かった。



…けど、行くべきじゃなかった。



私はそこで信じられない百桃の秘密を聞いてしまったのだから。



知らなければ百桃を傷つけることも、あんなことも、なかったかもしれないのに。



希輝「あ…でんきついてる」



リビングには電気がついていて、ドアも半開きだった。



だからそれを押して開けようとした、その時。



智軌「………だ、、な」



リビングの中から、聞いたことの無い冷たいパパの声が聞こえた。



思わずビクリと身体が飛び跳ね、押そうとした手を引っ込めた。



智軌「………なん、、ろ?」



中では誰かと会話しているのか、パパが怒鳴るように堅い声を出す。



怖かったけど、でも気になって、音を立てないように隙間の空いたドアから中をのぞき込んだ。



でも、パパたちは丁度死角になるところにいて、私からは見えなかった。



ただ、中には入らずに外から耳をすませた。



すると、さっきまで途切れ途切れだった言葉がはっきりと聞こえるようになった。