…黙ってそれを聴いていた2人は面を食らったように黙り込んだ。
円「……治らないわけじゃ、ないんだろ?
大体、原因がわかってないんだからどうしようもないし、俺らに何が出来るわけでもない」
辰巳「…そうだな。
取り敢えず俺たちは知り合いの医師をあたってみる。人脈は俺らの方が広いしな
お前らは一旦倉庫に戻れ。
…つーか、お前ら百桃知らねぇか??あの日から行方不明なんだ」
冷静な2人の言葉に俺たちはようやくハッとして顔を見合わせた。
…百桃が、あの日から、行方…不明??
うそ、だろ?だってあいつは……今日、っ!!
……そしてようやく、俺たちは大変なことをしでかしていたことに気がついた。
あの状態で、あの百桃を、俺たちは倉庫に置いてきた。
責めるだけ責め、自分の怒りをただ百桃にぶち当て、そのまま、放ってきた。
それをようやく自覚し、サァーッと顔から血の気が引いたのがわかった。
今すぐ戻らなければ。
瞬時にそう考えた。そして、それと同時にどう百桃に言えばいいのか迷った。
今更言い訳がましく言うのか、?置き去りにしたくせに?
……けど、そんな考えもすぐに吹っ飛んだ。
今まで葵絆のことで志の次に落ち込んでいた雷が全速力で俺の目の前を遮ったから。
志「え、あ、おいっ!雷!?」
困惑気味で雷を呼ぶ志の声。
もう、考えるまでもなかった。
俺と飛鳥は2人で一瞬目を合わせ、同時に浅く頷いた。
そして、俺たちも雷を追うようにして駆け出した。
志「おい、!?飛鳥!京!」
更に動揺を含ませた志の叫び声を背に、俺たちは倉庫へと一直線に向かった。
…けれど、、
--バンッッ
雷「百桃っ!!」
気づいた時には、もう遅かった……
幹部室はもぬけの殻。
駆け込むように百桃専用の部屋である隠し部屋に向かったが、そこにはもう、百桃のものは何一つ残っていなかった。
…たった一枚、俺たちへ向けた手紙を残し、百桃は消えた……
『いままでありがとうございました。
どうか、すこやかに。
ごめんなさい。さようなら。』
たった三行しか書いていない、一枚のルーズリーフ。
今まで一度も見たことのなかった百桃の字。
幼さの残る大きな字で、どこか大人のような滑らかな字で、色んな感情が込められた字。



