…葵絆が昏睡状態になってから、10日が経った。



午前中に、縫った傷口の抜糸を済まし、今は倉庫にいた。



同じように怪我をした雷と飛鳥も一緒にいる。



俺が気絶したあの日、2人とも臓器が傷ついてないか精密検査をしたが、大丈夫だったらしい。



未だに薄く痣は残っているらしいが、痛みはもう無いとのこと。



そして葵絆は……



あの日から今日まで、一度も目覚めていない。



かといって、容態が悪くなったわけでもない。



青星の下っ端たちには、葵絆は失踪した。と志が伝えた。



事故にあって、とかだと見舞いに行くことになる。



目覚める確率が極めて低いことも、伝えなければならなくなる。



…だから、葵絆が眠っている間は'失踪'だと嘘をつくことに決めた。



現在の青星に総長は不在、そして、あの楓も…



青星を辞めた。



あの日あの場に居た5人の下っ端も、楓と共に辞めていった。



何かあったのか。と他の下っ端に詰め寄られても、私情で辞めるということを貫いていた。



けど、俺たちにはなんとなくわかっていた。



尊敬する総長を、仲間を、目の前にいたのに守れなかったから後悔してるのだろう。



いや、後悔なんてもんじゃない。



恐らく'トラウマ'としてずっと心に刻み込まれていることだろう。



結局、俺たちは撃たれる瞬間を見ていなかった。



けど、俺たちより葵絆と百桃の近くにいたあの6人はバッチリ見ていたのだろう。



だから余計に俺たちより深い傷として残ったはずだ。



…そして俺たちも、



葵絆がいつ目覚めるかわからない中、ずっと総長不在の状態でいるわけにもいかない。



でも、俺たちが総長という肩書きを背負うには重すぎる。



……それならいっそ、四代目全員辞めてしまおう。



次の代に受け渡せば新幹部と共に新しい総長になる。



…だがそれも、そう簡単にはいかなかった。



なんせ、今でいう次期総長候補の楓がやめ、次期幹部候補に近かった5人もやめてしまった。



誰が総長に、副総に、幹部に、なるのか。



何日経ってもあの日のことが夢のように感じる俺たちには、そんな重要なことを決められるわけがなかった。



けれど、ずっとこのままにしておくわけにもいかない。



そして10日ぶりに俺たちは青星倉庫へと集まってきた。