円「…命に、別状はなかった。」



京「!ほんとか!?」



円「……あぁ。
出血量が多くて、ココが血を分けたから」



葵絆と志は稀血と呼ばれるもので、血が足りなくなると昔からお互いに献血するらしい。



今回は言わずもがな、出血量が大量で、輸血せざる負えなかった。



…じゃあ、今は志も貧血で寝てるかもな。



と、考えたところで話が終わっていないことに気づいた。



京「………他に、何か、あった…のか、?」



円「…もう、目……覚まさないかも、、しれない」



京「‥‥‥‥‥‥は、??」



目を、覚まさないかも、しれない…?



葵絆が??は、なんで……?



京「命には、別状ない、んじゃ……」



さっき、円がそう言ったじゃん。



志が血を分けたから、命に関わることはない。って



なのに……なんで?



円「植物、状態に近い、、って。
すぐ意識を取り戻すかも、しれないし‥‥もしかしたら、1年後、10年後かもしれないし………


もう、目覚めない可能性も、、ある、って。」



植物、状態??もう目覚めない?



うそ、だ……



なんで…なんで、っ!



だって、葵絆は背中を撃たれただけで・・・



植物状態になる原因なんか、ないはず、、なのに…。



……とてもじゃないが、信じられなくて、



ーーガタンッ



京「葵絆の、病室。どこ、」



点滴台を引っ掴んで、フラフラする足を床につける。



円「…2つ左。
でも、京、お前の足じゃ…まだ、」



立とうと力を入れると、ビリっと左足が痛んだ。



そこでやっと、自分の状態にも気づいた。



左脹脛には白い包帯が巻かれていて、足首を曲げるだけで激痛がはしる。



気絶する前の状態を考えても、恐らく縫ったのだろう。



暫くは安静にしていなければいけないのかもしれない。



でも、今の俺にそんなことは関係ないし。と再び足を床につけるが、立ち上がることさえも出来ない。



円「……ハァ
車椅子、使えよ」



何処から出したのか、円が'村野総合病院'と書かれたシールの貼ってある車椅子をベッドの横に移動させた。



右足はなんともなく、下に足がつけるから、両手と右足の力だけで車椅子に移動し、自分で車椅子を押した。



円はもう葵絆のところには行ったのだろう。



俺が無言で通り過ぎるのをじっと見ながらも、何も言わなかった。



さっき円に聞いた通り、病室を出て左に曲がり、二部屋目の扉の前で一旦止まった。



個室なのだろう、扉の横にあるネームプレートには'龍神葵絆'の名前が一つだけ。