…俺が初めてその"違和感"に気づいたのは、一度記憶を失い、殺し屋として働き始めた頃だった。



「明日のターゲットは光と蝶で行って。
セキュリティ高いし、警備も多いけど光と蝶なら突破できるから」



丁度俺が8歳になる前日、いつものように月からターゲットの資料を渡された。



まだ殺し屋を始めて一年も経ってない頃で、1人では何かあったら危ないから、と常に光陰や龍舞と組んで仕事をしていた。



…そんな俺たちの中でも一番優秀な光陰と組んで、気を抜きすぎていたのかもしれない。



………俺たちは、その仕事で"初めての失敗"を犯した。



"失敗"とは、ターゲットを殺り逃した訳ではない。



殺し屋世界のルールの一つ、"ターゲットには殺るまで気づかれてはならない"を破ってしまったことだ。



まだ世界一ハッカーになる前の光陰では高度であったセキュリティに"痕跡"を残してしまったことによる"ルール破り"。



仕事上での"失敗"、つまり俺たちのした"ルール破り"は裏では恐れられる"本部"行きもの。



いつ殺されてもおかしくなく、いつ解放されるかもわからなく、何をされるかもわからない。



謎で包まれる裏の黒幕、それが"本部"。



本部のボスも、本部の人間も、誰一人として知ることの無いその場所は、"底なし地獄"と恐れられていた。



…そして俺たちにはルール破りとしての"罰"を与える。と、所謂"底なし地獄への招待状"が送られてきた。



勿論拒否権などたかが殺し屋歴1年弱の俺たちにあるわけがない。



…俺は殺されるのを覚悟し、本部へ連れていかれた。



本部は真っ暗で、今にも吸い込まれそうな闇に染まり、とてもじゃないが長時間も居れば正常ではいられなくなりそうな程の異常さだった。



本部にいる人間は全員が真っ黒い仮面を付け、変声機を付けているのか全員が同じ高い気持ち悪い声だった。