「オレ、ガキじゃ、ない。」



鋭くオレを睨みつけてくるガキはあまりにも子供離れしすぎていて、恐怖さえ憶えた。



「てめぇ…。あの倉庫で何してやがった」



普通のガキなら、オレの顔を見て泣くか、この荒い言葉で泣くかのどちらかだった。



だが、このガキは泣きも怯えもせず、無感情な目で俺を見つめ続けた。



「オレ、刹那。族潰し。」



何故か単語しか喋らないガキは自分は刹那という名で族潰しだ、と。



「……お前、この前〇っつー暴走族を潰さなかったか?」



先日の奴らの族名を出すと、顔色一つ変えず、コクリと頷いた。



…つまり、奴らを潰したのは確実にこのガキだということだ。



「…てめぇはなんで族潰しなんざやってやがる。恨みでもあんのか」



その時、オレは初めてガキの容姿をしっかり見た。



年齢は恐らく5歳~7歳くらいで同年代と比べたら背は大きい方だった。



そして、今まで見た中でも一番綺麗な白髪で、見たことがない銀色と赤色の自然な感じのオッドアイ。



日本人離れしている髪色と瞳の色だが、顔は子供っぽく幼さが残る女顔だった。



けれど、"オレ"と言っているということは、恐らく男だろうとは想像がついた。



「……恨み…?」



だが、刹那はオレの言葉に目を丸くし、きょとんとする。



「??無いのか?」



さっきまで鋭かった目が緩くなり、思わずオレも睨むのをやめて素で話しかけていた。



「…無い。」



きっぱりと言い切った刹那の顔は嘘をついていなかった。



「じゃあなんでだ?
恨みでもねぇなら何があって族潰しをしてる。」



…この時、オレにはもう刹那に対して敵意はなかった。



そして刹那の瞳にもオレに対しての敵意はなかった。