「……ぁ……っ、」



不機嫌丸出しの刹那が放つ殺気が更に俺を怯えさせ、上手く声が出せない。



「チッ
用、無い…なら、」



「ま、っ!まって…ッ!!」



用が無いなら行くぞ。と言おうとしたのだろう刹那の言葉を遮って刹那の目を見て続けた。



「な、なんで俺のなまえをしってる。」



「…………。」



「俺のこと、なにかしってんの…?
じゃああにきや弟のことm…んぐっ」



兄貴や弟のことも知ってるのか。と聞こうとすると更に殺気を強め、俺の口を手で抑える刹那。



「ンーっ!!んッッ!!」



必死で声を出そうとするが、俺より凄く力の強い刹那に叶うはずもなく、ただただもがいた。



「……きみはなにもしらなくていい。」



プスッと何かを腕に刺された感覚があったが、俺はただ耳元で囁かれる言葉に集中していた。



「きみは、いまはしるひつようがない。」



既に口には刹那の手はないのに、叫びもせず、刹那の子供みたいな声色に耳を傾けていた。



「………さよなら、凪。」



ブチンッ



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そこで俺の記憶は途切れてる。



恐らく、あの腕に何かを刺された感覚は注射か何かだったんだと思う。



次に起きたら、神楽たちと同じで刹那に会ったことだけ記憶から抜けてた。」



『お、おい。つまり凪は火事の後に刹那である向日葵に会ったことがあったってことかよ!?』



『つーか、お前の親父さん…大輔?って人は刹那と知り合いってことだろ??』



イヤホンから聞こえてきたのは聞き慣れた斗真さん、瞬也さんの声だ。



凪「…はい。
その日以来は何も聞いたこと無いけど、確かに大輔さんは刹那の知り合いです。」



あの時聞いた親しい人だけへの口調は嘘では無いと確信している。



大輔さんは不器用な人だから。