「あ、あの…?」



資料が広がるテーブルが目の前にあり、俺はふかふかの1人がけソファーへと降ろされた。



「凪、お前は"刹那"という名を聞いたことがあるか?」



テーブルに少し隙間を空け、そこにコップを置いた大輔さんが突然問いかけてきた。



なんでそんなこと聞くのかすら当時の俺にはわからなかったし、大輔さんがなにを考えているのかさっぱりだった。



「せつ、な?…あの、ぼうそーぞくっていうグループをつぶした人??ですか?」



たまたま数日前の学校帰りにすれ違った不良が言っていた名前だ。



それからも何度もその名前を聞き、自分でも調べてみたが、全くわからなかった。



「!知ってたのか?まさか会ったことがあるのか??」



大輔さんが、一般の子供である小学生の俺が"族潰しの刹那"を知っていることに驚いたのも無理はない。



俺だって、たまたま偶然が重なり合い、知ったことだ。



「あ、いや、、なまえ…だけ、で…。

…あの…さっきの、でんわ、、」



「嗚呼。その刹那だ」



「…え、あの、せつな…って、人は……わ、るい、、人…?」



その時の俺は組織犯罪なんて全くわからず、ただ警察は悪い奴を捕まえるってことだけしか理解していなかった。



だからか、直感的に悪い奴なのかと思い込んだ。



「あー、ちげぇよ。オレの個人的な知り合い。悪い奴どころか…凪にとっては恩人だな」



「…えっ??」



「っと、悪いがこれから仕事に行かなきゃならなくなったんだ。1時間くらい留守番頼めるか?」



「へ、?あ、は、はい。」



恩人だと聞き戸惑っていた俺は反射的に大輔さんの言葉に返していた。