「なんでそんなこというの!?
僕にはにいちゃんなんていない!!僕はっ!」



「いるんだよ、神楽。
だって、僕が君のお兄ちゃんを殺したんだから」



「……は?」



やけに大人びた声色をした女の子は赤と銀に光る瞳で俺の目をじーっと見つめていた。



「ボクが、時雨をコロシたんだ」



プッツンーー



「……兄ちゃん…、コロシタ…?あんたが、、??うそだ」



一気に頭の中に火事の光景が吹き上がり、全てのことを思い出した瞬間だった。



「…ゴメンナサイ、ごめ」



「なんであやまってんの?
兄ちゃんは??あにきは??ねえ!どこなのさ!!」



女の子の謝罪を遮り、俺は夜中だということを忘れて怒鳴り散らした。



「ごめんなさ、」



「なあ!
あんたがあやまったら兄ちゃんはかえってくるの!?

兄ちゃんをころしたなら!!なんで俺の前にあらわれた!!
俺にころしてほしいのかよ!?兄ちゃんを、かえしてくれるのかよ!」



吹き返した感情はもう、自分では止められないくらい高まっていた。



目の前の女の子が誰だかも知らないのに。



言ってることが本当かどうかなんて確認しようが無いのに。



ただ目の前の同じくらいの子供が、兄ちゃんを殺したということが許せなかった。



「兄ちゃんをかえせっ!!」



ただあの火事のせいで、この女の子のせいで、兄ちゃんが死んだということだけが俺の頭を支配していた。



「…あの、コレ…、」



バシッ



「ふざけんな!!
こんなもので兄ちゃんのかわりになるとでもいうの!?」



「ちがっ!」



片言になりかかっていた言葉は普通に戻り、その声色は年相応だった。