「父さん!たのむからへんじして!!
"独り"にしないで!!父さん!!!!」
「………こ、…、く……。、」
「!!父さん!!」
掻き分けていた瓦礫の下から、確かに父さんの声が聞こえた。
俺は血が出ることなんて気にせずにただただ父さんの声が聞こえたところの瓦礫をどかしていった。
「!!!!
父さん!!父さん!!」
「こ…は、く………、。」
母さんと同じ、赤黒い血塗れな顔で俺の名前を呼んだ。
「なに、なに、?父さん。」
「こ…れ、を………、。」
ガラガラッ
小さい瓦礫の欠片が落ちていく中、父さんは傷だらけの手を俺の手の上に乗せた。
「…なに、これ??USBメモリ?なんでこんなのわたすの??いっしょにかえるんだろ、!父さん!!!!」
俺の手に落ちてきたのは、父さんの血が付いた黒いUSBメモリだった。
「たの、む……。、こ…はく、……」
「…父さん?父さん!!
たのむってなに!?なあ!父さん!!!!!!」
…それを最後に父さんはピクリとも動かなくなった。
いくら揺すっても、いくら声を掛けても、いくら名前を呼んでも、
父さんが目を覚ますことはなかった。
そして、俺のすぐ後ろにはもう炎がきていた。
さっきまでなかった灰色の煙が漂い、スプリンクラーはもう既に動いていない。
視界の端で血塗れでグッタリとドアに下敷きにされている母さんも、目の前で瓦礫に埋もれている父さんも。
…もう二度と、動く事は無い。
「かあさん!!とうさん!!
めぇさませよっ!!!!
っ!! なぁ!」
もう二度と、俺の名を呼んでくれる事はないのだ。



