クロ * Full picture of the plan * Ⅳ




座っているひまの足に、持っていた携帯のライトを当てる。



そこで見た"もの"に、俺は吃驚して思い切り顔を上げ、目を見開いてひまへと詰め寄った。



「っ!!ひまッ、これどうしたんだよ!?」



「………けがした」



一瞬だけ俺と目を合わせたが、すぐに逸らし、ポツリと呟いた。



…たった2年しか一緒にいないけど、それがひまにはありえないことだと、俺は知っていた。



「どこで!?何してだよ!!
お前が不注意でけがしたとでも!?

そんなん信じるわけがないだろ!!」



…ひまは、良くも悪くも"完璧"な子供だった。



同年代と比べてずば抜けていた俺よりも頭が良く、運動神経と共に反射神経も抜群。



おまけに行動は大人びていた。



転ぶ、躓く、ぶつける、はしゃぐ。



普通の子供が日常的に動く行動が、ひまにはなかった。



そんなひまが、自分で怪我をするはずがない。



だからそれはひまじゃなく、誰かに、意図的にされたものだと俺には予想がついた。



「……ただの"痣"。
気にすることはないし、すぐなおる」



特に気にする様子はなく、淡々と他人事のように話す。



「……、」



そんなひまに俺は顔を顰めたまま、携帯のライトをひまの足元から外し、隣に座った。



「「………。」」



お互いがお互いに何も話すことなく、沈黙が続く。



そんな中、ひまがぼーっと綺麗な星空を見上げ、口を開いた。



「…月が、きれいだね。」



真ん丸の満月を見て、ポツリと呟いた。



「………。」



隣に座っている俯いていた俺も、顔を上げて満月を見上げた。