座っているひまの足に、持っていた携帯のライトを当てる。
そこで見た"もの"に、俺は吃驚して思い切り顔を上げ、目を見開いてひまへと詰め寄った。
「っ!!ひまッ、これどうしたんだよ!?」
「………けがした」
一瞬だけ俺と目を合わせたが、すぐに逸らし、ポツリと呟いた。
…たった2年しか一緒にいないけど、それがひまにはありえないことだと、俺は知っていた。
「どこで!?何してだよ!!
お前が不注意でけがしたとでも!?
そんなん信じるわけがないだろ!!」
…ひまは、良くも悪くも"完璧"な子供だった。
同年代と比べてずば抜けていた俺よりも頭が良く、運動神経と共に反射神経も抜群。
おまけに行動は大人びていた。
転ぶ、躓く、ぶつける、はしゃぐ。
普通の子供が日常的に動く行動が、ひまにはなかった。
そんなひまが、自分で怪我をするはずがない。
だからそれはひまじゃなく、誰かに、意図的にされたものだと俺には予想がついた。
「……ただの"痣"。
気にすることはないし、すぐなおる」
特に気にする様子はなく、淡々と他人事のように話す。
「……、」
そんなひまに俺は顔を顰めたまま、携帯のライトをひまの足元から外し、隣に座った。
「「………。」」
お互いがお互いに何も話すことなく、沈黙が続く。
そんな中、ひまがぼーっと綺麗な星空を見上げ、口を開いた。
「…月が、きれいだね。」
真ん丸の満月を見て、ポツリと呟いた。
「………。」
隣に座っている俯いていた俺も、顔を上げて満月を見上げた。



