どんどんと彼方の声が大きくなっていくが、俯いたままで表情は読み取れない。
伊織は彼方の胸倉を掴む勢いで彼方に詰め寄った。
彼方「…っ……無理に決まってんだろっ!?
だって、お前あの時電話の相手に必死で辞めたいっつってたじゃねぇか!!
それでも辞めることが出来なかったのは、何か相当な理由があるんだと馬鹿な俺にも気がついたからだよ!
その理由を問い詰めて俺に何が出来た!?
あの時と同じで!何も出来ないことわかってて、口を挟めるわけが無いだろ!!」
そこでやっと彼方が顔を上げた。
泣きそうな顔で彼方は声を荒らげる。
…きっと、昔助けられなかった"響"と"歩"って子を思い出して、行動するに出来なかったんだろう。
いくら葉と仲が戻ったって、トラウマは簡単に治らない。
彼方は、今でも自分のせいで"響"と"歩"が亡くなったのだと思っている。
だからこそ、助けたいのに助けられないまま時が過ぎた。
??「……違う!!
あの時のは"かな"のせいじゃない!!
あの時、"かな"が居なければ俺は確実に死んでたんだ!
お前のお陰で俺は生きてるんだよ!!」



