「……お! りお! 莉音!」





「へっ?」




ミカの声であたしは、ハッとする。





ま、まずい……。三人の話し、全く聞いてなかった。



まずいぞ……、新学期そうそう、この三人の機嫌損ねちゃまずいぞ……。あたし。





「……今日の莉音、何か変だよ? ボゥーっとしてさ。聞いてないでしょ? うちらの話し。超サイアク……。マジ、テンション下がるんだけど……」





あからさまにサヤの表情が曇る。ミカやカナも無表情であたしを見る。





うわっわっ……ま、まずいぞ。まずいぞ。





ど、ど、ど、ど、ど どうしよう????





「おはよ~」


とそこへ、綺麗な声があたしの背中から聞こえてきた。




「あっ!! 姫梨ちゃん!!」




カナ達の表情が、パァと明るくなる。





彼女の声に、あたしの胃はますます悲鳴をあげる。




けど、サヤもミカも姫梨ちゃんが来た途端、態度が変わった。




キリちゃんこと、水瀬(みなせ)姫梨(きり)。





美人でスタイルも頭も良くて、運動神経も良くて何でもこなせちゃう完璧な女の子。

しかも、家は超お金持ち。





そんな漫画から飛び出したような人だからクラス中の人気者なのだ。




確かに、みんなが欲しがる物を全部持っている。




長く綺麗な髪は、ゆるやかなパーマが掛かっていて、風が吹く度にふんわり靡く。



綺麗にに整えられた眉毛に、長いまつ毛。パッチリした瞳。白く長い手足。モデルや芸能人並みに可愛いくて、オシャレ。



しかも、副業としてモデルをしている。なんでも、中2の頃にスカウトされたらしく
たまに雑誌に載ったりしている。



そのせいか、クラス全員、ううん、学校中の生徒から注目されているのだ。




ふわっと生ぬるい風が通り抜けた。その時、姫梨ちゃんの形のいい耳にはキラキラした碧い石のついたピアスが揺れているのが目に付いた。