「煥、そう嫌がるなよ。敵はおれたちと同じ言葉をしゃべってくれない。おれたちがあいつらと同じレベルの言葉を使ってやるしかないだろ。

おれたちの影響力と腕力があれば守れる人たちを、みすみすあいつらの手に渡してやることなんかできない」


「わかってる。戦う覚悟はあるさ。オレは大袈裟なのが嫌いなだけだ」


煥先輩は横顔だけをわたしに向けている。


文徳先輩はわたしを見つめていた。



文徳先輩は生徒会長で、暴走族の総長。


表の顔があって、本性がある。


その危険な対比に、わたしはゾクッとした。



「信用してほしい。瑪都流が鈴蘭さんを守るよ。もう怖い思いはさせない」



暗示にかけられたように、わたしはうなずいた。