文徳先輩の腕がわたしの体を支えてくれる。
わたしはどうしようもなく、ふらつきながら震えている。
鈍い音が三回と、くぐもった悲鳴が聞こえた。
文徳先輩が低く笑った。
ブレザーの胸が波打った。
「煥のやつ、容赦がないな。一瞬で沈めやがった」
わたしは文徳先輩を見上げて、ハッと胸を衝かれた。
文徳先輩の頬にえくぼができている。
切れ長な目が強く輝いてる。
こんなに男くさい笑い方をするなんて。
ダメだ、カッコよすぎる。
頭が真っ白になる。
恐怖が吹き飛んでいく。
煥先輩が駆け戻ってきた。
「まだそこを動くなよ」
そうだ。学ランの人が後ろにいるんだ。
学ランとわたしたちの間に立ちはだかって、煥先輩は右手を正面に突き出した。



