わたしは文徳先輩に肩を抱かれた。
そのまま歩き出す。
心臓がゴトゴト騒いでいる。
大丈夫。今回は、守ってもらえる。
わたしの身には何も起きない。きっと大丈夫。
路地の先に光がともった。
バイクのヘッドライトに照らされて現れる、特攻服の人影。
わたしは鳥肌が立つ。
あの手の感触を思い出してしまう。
気持ち悪い。怖い。
煥先輩が振り返らずに言った。
「兄貴と安豊寺はそこにいろ」
煥先輩が駆け出す。
赤い特攻服が何か吠えた。
怒鳴り声が路地に反響する。
わたしはカバンを投げ出して、文徳先輩にしがみ付いた。
怖い。何も見たくない。



