住宅地に入って、街灯の数が少なくなった。
一人でここを歩いた記憶がよみがえる。
ついて来る足音に気付いたのは、このあたり。
煥先輩が舌打ちした。
「尾行されてる。鬱陶《うっとう》しいな」
文徳先輩が声のトーンを低くした。
「一人か?」
「一人だな。でも、飛び道具を持ってやがる。ボウガンだ」
細く暗い路地の入口で、わたしは体がすくんだ。
だって、わたしは一度、ここを進んだ先で。
文徳先輩がわたしの肩に手を触れた。
「怖い?」
「は、はい」
「無理もないな。おれから離れないで。煥、先に行け」
煥先輩がうなずいた。
足音もたてずに路地を歩いていく。



