「煥先輩?」
「……何でもない」
煥先輩はそっぽを向いて歩き出した。
文徳先輩が呆れたように笑った。
「おい、煥、もっとゆっくり歩け。行こうか、鈴蘭さん」
「はい」
煥先輩が少し先で立ち止まる。
「安豊寺、あんたが先を歩け。じゃなきゃ、道がわからねえ」
ちゃんと送ってくれるつもりなんだ。無愛想だけど。
わたしと文徳先輩は並んで歩き出した。
なんだか信じられない。
「鈴蘭さんの家はどっちの方向?」
「山手のほうです。住宅地を抜けて、丘のいちばん上のあたり」
「大きな家なんだ?」
「そうですね」
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