「お役に立てて嬉しいです」
わたしはようやく笑い方を思い出した。
Tシャツ姿の文徳先輩に、ドキドキしてしまう。
筋肉のついた腕。うっすら透けた静脈。
文徳先輩が部室の面々を紹介した。
「ゴツいのが、ドラムの牛富《うしとみ》。隣の優男が、シンセサイザーの雄《ゆう》。紅一点が、ベースの亜美《あみ》。
牛富と亜美が三年で、雄が二年。全員、おれと煥の幼なじみだよ。預かり手の事情はわかってる。煥も、鈴蘭さんと同じだからな」
「白虎の家系が、伊呂波家なんですか?」
「そういうことだ。古い時代には、伊呂波家は名のある武家で、牛富と雄と亜美の家は伊呂波の家臣団だった。今はまあ、上下関係なんてないけどね。安豊寺家は、青龍?」
「はい」



