最終下校時刻まで長いようで短かった。
わたしは図書室から出て、暗い廊下を歩く。
プレートに「軽音部室」と書かれたドアの前で、少し待った。
やがてドアが開いた。
煥先輩がわたしを見付けて、ふぅっと息を吐いた。
「逃げ出すんじゃねぇかと思ってた」
「え? 逃げ出す?」
「明るいうちに帰れば、路地であんな目に遭わない」
「だって、文徳先輩のケガ、放っておけません」
あの痛みを、また引き受けないといけない。
思い出すだけで背筋が震える。
でも、やらなきゃ。
失礼しますと言って、わたしは部室に入った。
文徳先輩は床に座り込んでいた。
タオルで血を押さえながら、苦笑い。
「ごめん。煥に事情を聞いて、気を付けてはいたんだ。でも、結局やっちまった」



