「あいつの声、いいだろ? 兄弟なのに、声は全然違う。あいつだけ、ほんとに特別な声してるよ。おれ、あいつの声が好きでさ。よかったら、聴きに来てほしいな」
文徳先輩がわたしのほうを向いた。
わたしは笑顔をつくった。
頬がギシギシ鳴るような気がした。
「機会があったら、ぜひ。文徳先輩がギターを弾くところも見たいです」
「ありがとう。まあ、そのうちね。じゃあ、おれ、煥を追い掛けるから」
チラッと手を振った文徳先輩が、軽快に駆け出した。
頭の中がぐるぐるしている。
わたし以外の預かり手に出会うなんて。
その人が文徳先輩の弟だなんて。



