噂をすれば影って、たまに本当に実現する。
「ちょっと失礼。鈴蘭さんはいるかな?」
人前で話すことに慣れた、堂々とした声がした。
わたしとさよ子を取り囲む人垣が割れる。
文徳先輩がドアのところで片手を挙げた。
もう片方の手に煥先輩をつかんでいる。
長江先輩も一緒だ。
さよ子がパッと顔を輝かせた。
その逆に、煥先輩と長江先輩が顔を引きつらせた。
わたしもあんな顔したんだろうな。
「やだもうこれ奇跡!」
「さ、さよ子?」
さよ子が、抱き付いちゃうんじゃないかって勢いで、煥先輩のほうへ飛んでいった。
「瑪都流の煥さんですよねっ?」
「あ、ああ……」



