わたしは顔を上げた。


文徳先輩が真剣な表情をしていた。



「鈴蘭さん、今のチカラは?」


「あの……」


「きみ、能力者だったのか。預かり手なんだな?」



確信的な文徳先輩の言葉。


わたしは頭が真っ白になった。



とっさにチカラを使ってしまったけれど、本当は決して誉められたことじゃない。


チカラは大っぴらにしてはいけない。


青獣珠の存在を隠しておくべきなのと同様に。



わたしは立ち上がった。


視線が集まる。


誰の目を見ることもできない。



「このことは……お願いします。秘密に、しておいてください」



体が震える。


わたしはきびすを返した。


カバンを拾い上げて、早足でドアに向かう。