わたしは一度、息を吐いた。 また、ゆっくりと吸う。 薬指のズキズキが収まってくる。 しゅわしゅわと、傷口が温かい。 パックリ開いていたのが、ふさがっていく。 文徳先輩が吐息交じりに言った。 「傷が、消えた……」 左手の薬指から痛みが消えた。 青い光がひとりでにしぼんだ。 傷の治療が完了したんだ。 状況だけが後に残された。 わたしが文徳先輩の左手に触れている。 後ろから声が降ってきた。 「おい、あんた」 煥先輩の透明な声は、感情が読みづらい。 ただ、硬い響きだった。