「煥さんの声を聞いて姿を見て、恋に落ちたと気付いたときには、もう、わたしの願いは動き出していて。

未来をのぞき見ました。想いは、実を結んでいませんでした。こんなはずないと思って、悲しくて苦しくて、だから強く願いました」



小夜子が言葉を切る。



幸せがあふれるはずの、未来のあの日。


煥先輩の隣にいたのは小夜子ではなくて、小夜子は絶望して、宝珠に願った。


あの日の幸せ全部を代償にして。



間違っていると断罪する資格は、わたしにはない。


わたしは亜美先輩を刺したことがある。


小夜子の恋を阻もうとしたことがある。



小夜子と同じ絶望を目にしたら、わたしも同じ願いをいだくかもしれない。


それがたとえ禁忌だとしても。


因果の天秤を大きく狂わせる願いだとしても。