煥先輩が静かに尋ねた。



「どうしてオレなんだ?」



心底、不思議そうな響きだった。


煥先輩は、いつもだ。


自分に向けられる好意を信じようとしない。



小夜子が目を伏せたまま答えた。



「最初に声を聞きました。歌う声を。力強くてキレイな声。それだけじゃなくて、迷ったり、尖ったり、揺れたりする。

生きていることそのものみたいな声だと思いました。生きても死んでもいないわたしには、驚きでした」



メールにも書きました、と小夜子は付け加えた。


伝えたはずなのに、伝わっていない。そのもどかしさは、わかる。