小夜子がポツリとつぶやいた。



「煥《あきら》さんの体、温かい……」



戸惑う小夜子の黒い目が伏せられる。


煥先輩がその耳元にささやく。



「体があって、生きてるんだ。温かくて当然だろ。あんただって同じだ」



小夜子は少し唇を開いた。


声は発せられない。ああ、と息をつく。



沈黙が落ちた。



チャンスだと、頭の隅ではわかっていた。


煥先輩が小夜子を抑えている。


今のうちに小夜子を倒せばいい。



でも、わたしは体が動かない。


長江先輩も海牙さんも、煥先輩と小夜子を見守ることしかできない。