「趣味の悪ぃ遊びはやめろ」



ささやく声は、命を持つクリスタルの結晶。


澄んで尖って貴い、魔法のような響き。



煥先輩は覆いかぶさるように小夜子を抱いて、小夜子の耳元に口を寄せるように、顔を伏せている。


甘いシーンなんかじゃないのに、わたしは立ち尽くして声を失った。



「煥さん、放してください。わたしは……」


「やめろ。わがままも狂ったふりも、いい加減にしろよ」


「放して」


「振りほどけばいいだろ。力、全然入ってねぇんだから」



低めた声は、苦痛をこらえるためだ。


すがるような抱き方は、力が入らないから。


煥先輩を拘束する金色の靄は拍動するように輝いて、煥先輩を磔《はりつけ》に連れ戻そうとする。