小夜子の笑顔が怖い。
ときおりクスクスと声を漏らしながら、楽しそうにツルギを操っている。
「狂ってる……」
わたしはツルギを構える。振りかぶって、宙を薙《な》ぐ。
無数の木の葉が小さな刃となって飛んで、小夜子を襲う。
小夜子は動かなかった。
振り払いもしなかった。
小夜子の全身に浅い傷が走る。
小夜子はうっとりと笑う。
「痛い。体があるから、傷が痛い。痛みは、生きている証拠ね。死なないために生きてもいない存在だったわたしが、そのチカラを手放した。痛みこそがその証拠」
小夜子がわたしを見る。
漆黒のまなざしが、わたしに微笑みかける。



