わたしは文徳先輩の左手に触れた。
大きな手は、少しザラッとしてる。
手のひらの厚みや、関節の太さ、爪の大きさ。
自分の手とは全然違うから、一つひとつにドキドキしてしまう。
文徳先輩がわたしを見ている。
わたしは顔を上げられない。
血があふれ出す傷口に、右手をかざす。
呼吸を整える。
青い光を、胸の中にイメージする。
温かくたゆたう水のような、優しく包む月影のような、青くて柔らかで透き通った光。
光がわたしの手のひらから染み出す。
文徳先輩が息を呑む。
かすかな息遣いすらわかるくらい、わたしは文徳先輩の近くにいる。



