煥先輩の体がふわりと宙に浮いた。


両手両足の金色の靄は、形を持たない拘束具だ。


まるでそこに目に見えない十字架があるかのように、煥先輩が宙に磔《はりつけ》にされる。



「くッ……おい、放せ!」



煥先輩が無理やり体を動かした。


まったく動けないわけじゃない。


力任せに拘束具を引きずって、右腕を振り下ろそうとする。


その手に白獣珠のツルギがある。



小夜子が煥先輩の右腕に触れて、甘い声で告げた。



「動かないでください。動いたら、痛いですよ。じっとしていれば、痛くも怖くもありませんから」


「ふざけんな。オレは……」



動きかける唇を、小夜子の唇が封じた。