「四獣珠の預かり手が違反者を排除する。そういう取り決めがあるんですよね? 煥さんが白虎だなんて、皮肉です。わたしは煥さんと争いたくない」
煥先輩と小夜子の距離が縮まっていく。
あと三歩。
煥先輩が無言で短剣を振りかぶる。
小夜子が足を進める。
二人の距離は、あと二歩。
あと一歩。
ヒュッと夜気が鳴る。純白がひらめく。
煥先輩が逆手に握った短剣が、ピタリと止まった。
切っ先は、小夜子の首筋に触れそうで触れない。
二人の距離は、抱き合わないのが不自然なくらいの近さだった。
「刺さないんですか、煥さん?」
「刺したら、あんたは死ぬのか?」
「少なくとも、この肉体は消滅します」
「精神のほうは死なねえって意味か」



