「学校の怪談みたい。髪が長い女の子の姿がちらつく話、ありますよね」
わたしの言葉に、みんなうなずいた。
二年生の教室。音楽室。生徒会室。校長室。放送室。図書室。
ぐるぐると、小夜子に連れ回される。
暗さにも目が慣れた。
何度か、海牙さんが全速力で追いすがろうとした。
でも、小夜子はつかまらなかった。
煥先輩が速度を上げようとしたこともあるけれど、それは全員で止めた。
煥先輩が単独行動をするのは危険だ。
小夜子がほしがっているのは、煥先輩なんだから。
軽音部室の前で、小夜子は振り返った。
キレイな笑顔は、あまりにも非現実的な光景だった。
小夜子がまた動き出す。
やがて、追い掛けっこにも終わりが来た。



