わたしは煥先輩の隣をすり抜けて部屋に飛び込んだ。 「失礼します!」 音楽をやるための部屋だった。 ドラムセット、シンセサイザー、スピーカー。 スタンドに置かれたエレキギターとエレキベース。 音楽室と同じ材質の壁と天井。 文徳先輩が床に座り込んでいた。 左手の指をタオル越しにつかんでいる。 タオルは真っ赤に染みていた。 「鈴蘭さん?」 文徳先輩が目を丸くした。 初めて見るラフなTシャツ姿にドキッとしてしまいながら、わたしはカバンを投げ出して、文徳先輩に駆け寄った。