部屋の内側からドアを支える彼は、部屋の中に向かって声をあげた。
「とにかく兄貴は止血してろ。保健室かどこかから人を連れて来る!」
一度聞いたら忘れられない、その声。
クリスタルみたいだと感じた、男の人の声だ。
ドアから姿を現したのは煥先輩だ。
文徳先輩の弟の、銀髪の悪魔さん。
煥先輩は廊下に飛び出そうとして、ビクッと体をこわばらせた。
わたしがいるなんて思っていなかったみたい。
わたしは煥先輩に詰め寄った。
「文徳先輩、ケガされたんですか?」
煥先輩が眉をひそめた。
「あんたは?」
「ケガだったら、わたしが治せます!」
「治せる? 兄貴のケガを?」



