だけど、小夜子は今、肉体を持って存在している。
触れることができて、学校に通っている。
平井さんがわたしの胸の中の疑問を汲み取った。
「そうだね、鈴蘭さん。彼女は、小夜子という少女になることを選んだ。精神のままでは、煥くんに触れることができない。肉体を得るために、自分で月に願いを掛けた」
嫦娥公園のそばに家がある、と小夜子は言った。
本当は嫦娥公園の中なんだ。
嫦娥の祠がチカラの接点だった。
チカラを持つわたしが恋の願掛けをして、月の姫君がその声を聞いて目を覚まして、彼女は煥先輩が歌う姿に恋をした。
この一枝を病ませるほどに一途な恋を。



