校庭から離れた場所にある図書室は静かだ。
スポーツ系の部活の声は聞こえない。
音楽室からも遠い。
かすかにブラスバンドの音が聞こえる日もあるけれど。
その静かな図書室に、校内放送が流れる。
「まもなく最終下校時刻になります」
十九時に校舎の明かりが消される。
今は十八時四十分を回ったところ。
やっぱり今日も、予定していたよりも予習に手間取っている。
家でも頑張らなきゃ。
わたしは荷物をまとめて図書室を出た。
窓の外は薄暗い。
晴れた空に、満月に近い月が見える。
「キレイな月。願いを叶えてくれてありがとう。文徳先輩と会って話せたよ」
月に願いを掛けるのは、子どものころからの習慣だ。
流れ星より、月なの。



