轟音をあげて吹き抜ける風になった。
景色がするすると流れ去っていく。
頬や耳をかすめて過ぎる空気が冷たい。脚も冷える。
でも、煥先輩にくっついたところは温かい。
革のジャケット越しには、体の感触はわからない。
煥先輩にとっても、きっとそれは同じだ。
よかった、と思う。
胸のドキドキを聞かれずにすむ。
毎日、時間をかけて上り下りする坂が、あっという間だった。
わたしは自分の家のそばに降ろされる。
魔法が解けた気分になった。
「ありがとうございました」
ヘルメットと上着を煥先輩に返して、カバンを渡してもらう。
煥先輩は何も言わない。



