生徒玄関で寧々ちゃんたちと別れた。
靴箱のところでクラスメイトと一緒になったから、数学の宿題のことを話しながら教室へ向かう。
「おはよう」
「あ、おはよ」
気楽な挨拶が飛び交う。
「安豊寺さん、さっき、文徳先輩と話してなかった?」
「話してたよ」
「ずるいー!」
「えへへ、ずるいでしょ?」
襄陽学園の進学科にしてよかった。
価値観が似ている人が多い気がする。
似てなくても敵じゃなくて、違う価値観に対して大らかだ。
自分に自信があるから、ブレないのかな。
中学時代はこうじゃなかった。
わたしのことを嫌いな人は最後まで嫌っていて、寧々ちゃんの目を盗んでの嫌がらせが絶えなかった。
「数学の課題、解けた?」
「一つわからなかったよ」
「だよねー。高校の数学、ヤバすぎるって」
「ヤバすぎるね。進学科だもんね」
恥ずかしながら、わたしは数学が苦手で、授業開始から一週間にして、もうふぅふぅ言っている。
頑張らなきゃね。文徳先輩みたいに。



