不良っぽい銀髪の人がわたしを見た。
金色の目には温度が感じられない。
この人が、文徳先輩の弟?
確かに顔立ちはよく似ている。
背は、文徳先輩のほうが高い。
銀髪の人はクルッと背を向けた。
「兄貴、遅い。先に行くぞ」
低い声なのに、響く。
クリスタルの結晶みたいな声だと、なんとなく感じた。
男の人の声を透明だと感じたのは初めてだ。
透き通って、尖っていて、冷たい。そして、とてもキレイだ。
文徳先輩が肩をすくめた。
「あいつがおれの弟の煥《あきら》。普通科の二年だよ。愛想がなくて、悪いな。おれのバンドのヴォーカルなんだけど。歌うとき以外はずっとあの調子なんだ」



