「曽祖父が家系の財産を食い潰したから、預かり手として正統に阿里家を相続してしまったぼくも、ぼくの両親も、裕福ではありません。
両親は平凡で温かい人たちですよ。意外でしょう?」
失礼だけれど、うなずいてしまった。
だって、海牙さんは平凡からほど遠いし、大都高校は学費がすごく高いらしいし。
「ぼくは不気味な子どもでした。道路を通り過ぎる車の時速を延々と言い続ける。天体を見上げて地球との距離を言い当てる。
人間の目には観測不能なブラックホールの位置を指摘する。でも、両親は普通に育ててくれました。だから申し訳なくて、家を離れたかった」
「申し訳なくて?」
「ええ。早く両親を不気味な息子から解放してあげるために、ぼくは奨学金を獲って大都高校に入学しました。
今は奨学金の出資者である平井さんの家に下宿しています。実家にいたころよりは気楽です。平井さん自身が能力者だしね」



