突然。 「おい、兄貴」 その声は、空気をまっすぐ貫いた。 大声ではなくて、むしろ、ささやきに近い。 けれど、ピシリとよく通る声だった。 声の主は数歩先にいた。 その姿に、わたしは思わず息を呑む。 銀色の髪、金色の瞳。 両耳にはリングのピアス。 長めの前髪に隠れがちの、不機嫌そうな無表情。 切れ長な目、スッとした鼻筋、薄い唇は、作り物みたいに整っている。 着崩した制服の、見るからに不良だ。