胃液でのどが焼けて声が割れていた。


海牙さんはポケットからハンカチを出して、手と口を拭った。



煥先輩がこぶしをほどいた。



「この屋上からライヴの夜に戻ったときも吐いてただろ。北口広場で会ったとき、呼吸が乱れてた」



海牙さんが顔を上げた。


充血した目に涙がたまっている。



「ばれてたんですか?」


「ケンカしまくってる不良の勘を見くびるなよ。相手の体調がどんなふうか、すぐわかるんだ」


「それは不良の勘じゃなくて、煥くんだからわかるんですよ」



海牙さんが初めて、柔らかく微笑んだ。